クリスロード商店街の雑居ビルの地下に店舗を構える「Baroque Works」は、合鍵と靴修理の専門店。

 

オーナーの鈴木寛さんは「僕、果物屋さんで働いていたんですよ。その時、どういうわけか、お客さんから“靴の修理店を出すからやらないか？”って誘われて（笑）。断り続けていたんですけれど、ついに根負けして、お店を任せてもらうことになりました。決心してから開店まで1ヶ月しかなかったので、その期間で修行して。次の日にはステップアップしていなくちゃいけなかったから、結構つらかったですよね（笑）」。そんな鈴木さんに、またすぐに転機が訪れた。「靴修理のチェーン店から『うちで独立しないか？』とお誘いを受けまして、E BEANSでお店を持ちました。そこで14～5年働いたころに、震災が起こったんです」。震災後はE BEANSがしばらく閉店していたため、鈴木さんも店を離れることになった。「もういっそのこと、新しい業種で何か始めようかなと思ったんです。でも、お客さまから本部にも問い合わせをいただいているのを知って、初めて僕の仕事が求められているというのが分かったんですね。それで、やっぱりこの仕事に戻ろうと思いまして。物件を捜し歩いている間にもお客さまから『まだ開けないんですか』と聞かれて、『また必ずオープンしますから』と約束をしたんです。E BEANSからも歩ける範囲で物件を探して、2012年に今のこの場所に落ち着きました」。

再オープン後は、これまでの顧客に加え、口コミで新規客も増えた。「多い日で1日30～40足の修理をします。かかとのゴム替えや前に滑り止めを着けてほしい、ステッチがほつれた…など簡単なものから、靴底に穴が開いた、ブーツが破れた…などいろいろですね。

洋服のリフォームを応用した技術を使うこともありますよ。普通の靴修理の技術では一見不可能そうなものでも、大事にしているのが分かると何とかしてあげたいと思ってしまうんです」。修理を待つたくさんの靴に囲まれて、鈴木さんは微笑んだ。

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